カワサキW650 (EJ650A) の文字が見えなくなった!? 液晶メーターの日焼けで劣化?車検は通る?門真の整備士が薄くなった液晶を完全修復!

今回ご依頼いただいたのは、「カワサキ W650」の液晶メーターです。

W650の生産は2008年の時点で終了していて、中古車市場での価格は高騰しています。なぜ2008年かというと、この年は排ガス規制が強化された年で、キャブレター仕様のバイクはその規制を通りませんでした。カワサキW650も含め昔のキャブレター仕様のバイクは一様に販売を中止しています。

 
キャブレターとは?  

=エンジンに燃料を供給するシステム
 ⇒2000年代前半まで一般的に使われていたシステム
  燃料と空気の混合を機械的に制御しており、正確で緻密な制御ができない
    ⇒未燃焼のガス、つまり排ガスが出やすい

  ◎現代のバイクや車一般的に使われているのはインジェクション!
 ⇒電子制御で正確に供給しているので、未燃焼のガスが出にくい  

カワサキW650はクラシックな見た目と最新技術後融合された“ネオクラシックバイク”で、とってもかっこいい見た目をしていますよね!

1960年代に発売された人気車「カワサキ W1」とデザインが似ていることからも、往年のバイクファンから高い人気を誇っています。

 今回はそんなW650のメーター修理のご依頼をいただいたので、しっかり修理していきます。

メーカー・モデル名カワサキ・W650
型式EJ650A
排気量675cc
エンジンタイプ空冷4ストローク・並列2気筒

まず初めに、故障した症状を動画でご覧ください。

エンジンを付けても針が回るだけで、液晶には数字が何も映らないのが分かると思います。

写真で見てみましょう。

W650の純正メーターに表示されるのは、3つの情報です。


<W650 純正メーター(液晶部分)表示内容>  

オドメーター (ODO | 総走行距離)
・トリップメーター
・時計  

オドメーターとは、バイクが製造されてから走った総走行距離の事です。

例えば中古でバイクを買った場合、総走行距離の書き換えを行いたい!と思うかもしれませんが、走行距離改ざん防止の為に総走行距離はメーカーや法規則によってかなり厳重に管理されています。しっかり知識を持った上でオドメーターのカスタムを行うようにして下さい。


オドメーターの変更について  

◎技術的観点では可能
 ⇒メーター自体の交換や、読み取りチップの書き換え、アナログメーターの巻き戻し等のやり方でオドメーターを変更する事自体は可能。

  ※法律上、オドメーターの変更は違法行為になる可能性がある
 ⇒走行距離を意図的に変更(改ざん)した場合、罪に問われる可能性があります
  ⇒道路運送車両法違反、不正競争防止法違反

    オドメーターを変更する際は変更前の走行距離を車検証に記載し、報告する必要があります。
メンテナンスやカスタム目的で交換する事自体は違法ではないので、旧メーターの走行距離をしっかり記載おきましょう。

オドメーターの変更とは異なり、トリップメーターは自分が計測したい特定の区間があれば随時書き換えをする事が可能です。

なんにせよ、液晶画面に表示される内容は走っているドライバーからしたら知りたい、知らなければいけない情報です。

見えなくなった場合はすぐに修理して、液晶に映るはずの文字を映るようにしていきましょう!

故障個所の特定ですが、今回は「偏光板」を交換する事によって修理しました。

「偏光板...?」となる方もいらっしゃると思うので、まずは液晶画面の構造についてお話します。


偏光板とは  
      
光の偏光方向を制御し、人が視認できるように文字や映像を表示させている光学フィルム
 ⇒光は本来あらゆる方向に振動しており、視認できない。
  偏光板はこの光の方向を制御することによって明暗を切り替えたり視認させたりする  

液晶とは  

液晶は液体のような流動性を持ちながらも、ある一定の規則に従いながら並ぶ固体のような性質を持ち合わせている
 ⇒電圧をかけると液晶分子の配列に変化が起きる性質を活かし、画面に画像を表示させている

私たちが見ている液晶は実は何枚もの構造になっていて、それをバックライトで後ろから光らせることによって文字を視認できるようになっています。

そして液晶の文字が見えなくなる多くの原因が「偏光フィルター」の劣化です。偏光板は一番外側に配置されているので、太陽の紫外線をもろに受け、劣化しやすい箇所です。

特にカワサキW650のような既に生産が終了していて中古車として出回っているバイクであれば、既にかなりの走行距離を走っているはずなので偏光版の劣化が進んでしまっている可能性が高いです。

外側両サイドに位置する偏光板ですが、私たちが目にする側の偏光板は光を通すか遮断するかを制御している部分です。なので、この偏光板が劣化すると光を遮断できなくなり、「画面が見えにくい・薄い」というような症状が現れます。

液晶が見えなくなる原因に多い「偏光板の劣化」ですが、今回もそのパターンだったという事です!


◎個人で修理はできる?


  「一番外側にあるなら修理も簡単では?」と思うかもしれませんが、実はかなり細かく集中力と知識を要する難易度の高い修理です。
偏光板の交換にたどり着くまでには様々なバイクの部品を解体していきますし、液晶部分、偏光板の取り外しもかなり細かい作業になります。
  液晶画面の交換は業者に任せる事をおすすめします。  

このように、メーターをバイクから外した後、更に分解して劣化した偏光板を取り除きます。

外したら偏光板が劣化している事がより分かりますね。

では修理後の様子を見ていきます。

外した偏光板を新品のものに取り換えました。

文字がはっきりと映るようになりました!

もちろん夜の視認性も抜群です。

今回はカワサキW650の液晶画面を修理しました。

今はもう販売されていないので、中古車での販売のみになります。

寂しい気持ちもありますが、カワサキW650には後継モデルが登場しています。

カワサキで有名なW800です!


W650

◎発売年 : 1999~2008年
◎排気量 : 675cc
◎燃料供給装置 : キャブレター
◎排ガス : 非対応
W800

◎発売年 : 2011年~現行
◎排気量 : 773cc
◎燃料供給装置 : インジェクション
◎排ガス : 対応  

W650のデザインやコンセプトを引き継ぎながらも、排ガスの規制に対応するように進化したモデルです。

乗り心地は全く同じとはいきませんが、違和感は無く乗れるレベルでW650の設計思想が受け継がれていると思います。見た目もかなり近いモデルなので、見た目が好きだった方にも刺さるのではないでしょうか。

弊社では様々な液晶画面の不具合に対応しております。

大切な愛車に何か不具合がありましたら、是非一度ご気軽にご相談下さい。

車検では大きく分けて3つの項目で検査が行われます。


検査項目

①外観
 ・ライト類
 ・車高
 ・ワイパー  

➁下回り、足回り
 ・ブーツ類の亀裂や損傷の有無
  ・マフラー
  ・タイヤ、ホイール

➂性能
・フットブレーキ
・パーキングブレーキ
  スピードメーター
・サイドスリップ
・ヘッドライト
・排ガス

おおまかに検査項目を挙げればこのようになりますが、車検時には液晶が視認できるかどうかも確認されます。

なので液晶画面が視認できないまま車検に通すと車検に通りません!注意しましょう。


車検が通らないケース   (例)

①総走行距離の記録が取れない場合
   ⇒車検時には走行距離の申告が必要。バイクのオーナーが「車検証の前回記録」と比較し、自己申告する事も可能。  

➁スピードメーターとオドメーターが連動している場合
  ⇒スピードメーターとオドメーターが連動しているバイクがたまにあり、その場合オドメーターが動作していないとスピードメーターも誤作動していると判定される事がある。  

➂メーターパネルのバックライトが切れている場合
   ⇒バックライトが切れていると、夜間での視認性が無く保安基準に適合しない可能性がある。

また、上記に当てはまらなくても、道路交通法では整備不良の車両を運転する事は禁じられています。


整備不良の罰則  

・3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
・違反点数加算  

なので、そこら辺をふら~っと走っている時に警察に整備不良で捕まる可能性があるという訳です。

なので、車検まだまだだから…と思って修理せずに放置するのはやめましょう!自分が日頃から命を預けて乗っている乗り物ですから、しっかり整備してあげて下さいね。