【トライアンフ・ボンネビル T140ES】スピードメーターの針が振れる!暴れる!オーバーホール 速度計 故障 |メーター交換・修理| 大阪 門真 整備

 落ち着いたフォルムとクロム(Chrome)パーツ、丸ライトはいかにも英国車らしいクラシカルなルックスです。そしてエンジンの回転が生み出す独特の鼓動感、「アイアンホース」と呼ばれるにふさわしいバイク、それがトライアンフ(Triumph)です。

 今回お預かりした「T140ES」は1980年頃から1983年頃まで生産されていました。まさに英国バイク産業の衰退とブランド存続の危機の中から生まれたのが「T140ES」でした。現在では実用的なヴィンテージ(クラシックバイク)として高く評価されていますが、当時はメリーデン工場で製造された最後のオリジナル・トライアンフモデルだった事から激動の象徴とも言われたマシンでした。

 そんなトライアンフ・ボンネビルT140ESのスピードメーターの針が振れる(暴れる)とのご相談がありメーターをお預かりいたしました。セルスターターを備えたモデルでありながら、回転数の検出はワイヤー駆動というアナログな構造を持つT140ESらしいメーターの修理についてまとめたいと思います。

メーカー・ブランドトライアンフ・ボンネビルT140ES
Triumph Motorcycles LTD
総排気量744cc
エンジン形式空冷4ストローク並列2気筒(バーチカルツイン)

 T140ESのESは「Electric Start(電気式セルスターター)」の略で従来のキックスタートに加えてセルスタートが標準装備されたモデルになります。ちなみにセルスタートは和製英語になります。英語ではスターターモーターと言います。

 スピードメーターの針が振れる(暴れる)

 今回お預かりしたメーターは、トライアンフT140ES(T140系)の純正タコメーターになります。Veglia Borletti(ベリア・ボルレッティ)と言うイタリアの老舗計器メーカーのメーターになります。高級車向け計器を多く扱っているメーカーで、フェラーリやアルファロメオ、モトグッツィなどでも採用された実績を持っています。

 MADE IN FRANCEの表示があるのにイタリア?と思われるかもしれませんが、当時のVeglia Borletti(ベリア・ボルレッティ)はイタリア設計&フランス生産が主流でした。

表記 RPM × 1000
最大表示 7,000rpmから赤帯(レッドゾーンは7,000rpm~8,000rpm)
T140ESの744cc空冷4ストローク並列2気筒(バーチカルツイン)、360℃クランクエンジンとの相性を重視した構造になっています。
※360℃クランクのバーチカルツインは回転変動が大きく点火ノイズが出やすいため機械式の方が表示が安定する。
駆動方法 機械式、ワイヤー駆動(エンジン側から機械ワイヤーで回す)
駆動元 カムシャフト側から取り出し
タコメーターワイヤー内部の磁気カップで針を動かす
文字盤 ブラックマット調、白文字、白針
視認性重視(昼間向け)
白針、太めのフラット針
プラスチック製
内部構成機械入力軸、磁石ローター、アルミ製ドラッグカップ、ヘアスプリング、軸針・プッシュ、電気信号・点火信号は使用せず。電子部品が使用されていない(電子化されていない)。

 T140ES の純正タコメーターで針が暴れる症状として、最初に疑うのはタコメーターワイヤーの劣化です。機械的な回転伝達の不安定さが原因で症状が出ているのではないかと思われましたので、まずはメーター側からワイヤーを外し、エンジンを軽くかけてみました。ワイヤーの回転を確認しましたが、回転がガタガタしている様子は無いので、ワイヤーは原因から排除する事が出来ます。

 ワイヤー内部の摩耗や毛羽立ち、曲がり癖、潤滑切れなどが原因で針が暴れると言う症状が現れる事があります。低回転時に特に暴れる、回転をあげると一旦落ち着く等の症状がみられます。

 次にメーターの内部を確認します。ガラスを傷付けない様に裏側からカシメを起こしていきます。針を少し触ってみて動きを見ます。針の動き自体は悪くありません。針とメーター盤を取り外して古いグリスを取り除くなど掃除をしてグリスアップします。

 古いグリスが半固形化していたので、回転時に「軽い→重い→軽い」を繰り返すようになり、抵抗が一定で無くなった事から磁力に対する針の追従が乱れ、結果として針が暴れると言う症状がみられる様になったのではないかと思われます。回転が乱れているのではなく抵抗が乱れていると診断出来ますので、今回の原因は「内部潤滑の不均一」が原因と断定する事が出来ました。

 オーバーホール(≒レストア)が今回の修理内容になります。古いグリスを完全に取り除いた後は再潤滑を行います。潤滑してはいけない箇所もありますので、慎重に再潤滑を行っていきます。軸やブッシュなどを調整し、自重でスーッと戻る状態が理想ですので、抵抗が均一になるように調整します。

作業内容・部品等工賃部品代
機械式メーター修理40,000円
合計40,000円
消費税4,000円
総計44,000円
2026年2月現在

 組立後は手回しで針がスーッと動いて、0(ゼロ)でピタッと止まる事を確認し、引っ掛かり音も無い事も確認致しました。

 トライアンフ(Triumph)はイギリス生まれの歴史ある名門バイクメーカーになります。1885年にロンドンで設立した「シーグフリード・ベットマン貿易会社」がトライアンフの基礎になります。最初は完成車を仕入れて販売する形でしたが、後に製造から企画する様になりトライアンフ(商標)と名付けられました。

 トライアンフの製造したバイクが1907年から開催されているマン島TTレースで活躍した事で、高い信頼性と評価を獲得しました。

 その後幾多の変遷を経て現在に至りますが、その過程はまさに「禍福は糾える縄のごとし」。この言葉を実証するかのような年月がトライアンフを包み込んでいきます。時代に合わせて人気車種を生み出したかと思えば、時代に取り残されかけて、倒産の危機に晒された事もありました。

 それでもトライアンフは様々なレースで活躍し、世界最高速度記録を達成し世界中の人に愛されました。今東伸自動車が取り組んでいる様に、今までもトライアンフの整備をし続けた人(整備士)が存在し、部品を作り続けた人がいて、そしてトライアンフを愛する人が存在し続けた。本当に素晴らしいバイクだと感じます。

 バーチカルツインの鼓動、機械が動いている感覚と故障しても修理すると手応えが帰って来ると思える直感性。トライアンフはまるで生き物のようにそれぞれの時代の中に人と共に存在しました。

 1968年ホンダはCB750Fourを発売します。CB750は「世界最速のスーパーバイク」「世界を制した空冷直列4気筒」等と称され、世界中でブームを巻き起こします。程なくトライアンフは巨額の負債を抱え1980年代中盤に経営破綻と言う形でその歴史は一旦途絶えます。通常ならここでブランドは消滅してしまってもおかしくありませんでした。しかし1990年にカワサキの技術を取り入れ再興を果たします。新型トライアンフとして水冷直列3気筒あるいは水冷直列4気筒を搭載した車種(下表)を発表しました。3気筒エンジンはスムーズさと力強いトルクを特徴としたトライアンフを象徴するエンジンであり、4気筒エンジンは大排気量且つハイパワーなエンジンとしてモデル展開されました。

【1990年代 水冷直列3気筒モデル】

Trident 750 / 900 (トライデント): ネイキッドスタイルのスタンダードモデル。特に900が人気。
Daytona 750 / 900 (デイトナ): スポーツツアラーモデル。
Trophy 900 (トロフィー): ロングツーリング向けのツアラー。
Tiger 900 (タイガー): 初期のアドベンチャースポーツ。
Speed Triple (スピードトリプル): 1990年代後半に登場した、スポーツネイキッドのルーツ。
Thunderbird (サンダーバード): 90年代後半に登場したクラシックスタイルの3気筒。 

【1990年代 水冷直列4気筒(Four)モデル】

Trophy 1200 (トロフィー1200): 高出力なツアラー。
Daytona 1000 (デイトナ1000): 90年代前半に製造されたスポーツバイク。
Daytona 1200 (デイトナ1200): デイトナ1000の後に登場したハイパフォーマンスモデル。

 見事な復活劇を果たしたトライアンフでしたが、素晴らしい事に伝統のバーチカルツインを継承し、クラシカルなスタイルはそのままに、現代技術と融合したバイクを生み出したのです。

 基本的に「機械的に直感的な構造を重視する」と言う考え方が英国車には浸透しています。電子制御が無いバイクは機械的な構造がシンプルな分、適切なメンテナンスを行う事で長く乗り続ける事が出来ます。バイク好きな方はご自身で空気圧の調整やチェーンの掃除、張り調整など日常の中で出来る事は実施されていると思いますが、違和感を感じられた場合は出来るだけ早く対応される事をおススメ致します。 

 また旧車には電子制御が無い=安全装置が無いと言う事を指していますので、運転の難易度が高くなります。転倒などで部品等が破損すると、旧車の場合は入手が難しいのが現状です。メンテナンス出来るバイク屋・修理屋も限られてきます。旧車(クラシックカー)は趣味性が強く大変魅力的ではありますが、実際にメンテナンスを含め維持していくには、知識もお金も手間も人一倍必要になります。

 東伸自動車では、脈々と受け継がれ乗り継がれてきた旧車のみならず、バイクのメーターを総体的に拝見しております。お客様が大切にされてきたバイク、そしてこれからもお客様の生活(人生)に欠く事の出来ない大切な存在、そんな愛機のメーターにもしもの事がありましたらお気軽に東伸自動車までお問い合わせ下さい。遠方のお客さまも状況に応じて対応させて頂いております。

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